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庭園・ガーデン・植物園・花の名所の訪問記

庭園・ガーデン・植物園・花の名所の訪問記

毛越寺の浄土庭園

毛越寺(もうつうじ)は岩手県平泉町にある特別史跡・特別名勝の寺。また、世界文化遺産にも登録されています。かつて境内には多くの堂舎が並び、浄土庭園が配されていましたが、当時の堂舎はほぼ焼失しています。ただ、それらの遺構が良好な状態で残されており、大泉が池をはじめとした浄土庭園の大部分は修復整備されています。

境内入ってすぐの広場


境内に入ってすぐの広場。お寺らしく手水舎やお守り等の授与場所があります。
宝物館もありますが、帰りに立ち寄るとよいでしょう。周辺の松と紅葉が美しいです。

本堂


毛越寺の本坊。本尊の薬師如来が安置されています。庭園を巡る前にお参りしていきましょう。
本堂わきの通路には、秋にハギの花が咲きます。

境内の復元地図(クリックすると大きくなります)


ここから先を巡る前に、堂舎が焼失する前は、境内がどのような姿であったかを知るのがよいと思います。写真は境内に掲げられている当時の境内の復元図です。
ここでは池を中心に時計回りで主な見どころを紹介します。

南大門跡


毛越寺の正門の遺構で、礎石12個が残されています。現在では、境内に入って最初に大きく大泉が池の景色が望める場所になっています。

大泉が池(おおいずみがいけ)


浄土庭園の大半を占める、海を表現した大きな池。中央に大きな中島があり、周囲には州浜や荒磯(ありそ)、築山(つきやま)などを配しています。

築山


海岸に迫る岩山を表現した築山(つきやま)。池に向かって伸びるマツも見所です。

花菖蒲園


池のほとりにある花菖蒲園には明治神宮から株分けされたハナショウブが咲きます。
開花期は例年6月下旬から7月上旬ごろ

経楼跡付近


経文を収めた建物があった経楼跡付近。
このあたりは大泉が池に沿った道で、変化する池の景色を眺められます。

金堂円隆寺跡


毛越寺の中心的存在であった伽藍の跡。今は盛り土状になっているだけですが、南大門と池に浮かぶ中島との直線上にあり、当時は橋で池を渡って金堂にお参りできました。
上記にある復元図と見比べてみると色々と発見があるでしょう。

遣水



発掘調査中に往時の姿のまま発見された遣水(やりみず)。山水を池に取り入れるための水路ですが、斜面を滝状にし、流れを蛇行させることで川の流れを表現しています。
水底に玉石を敷き詰めるなどの技法は、日本最古の作庭書である「作庭記」に記されているもので、現存する貴重な遺構となっています。
周囲にはモミジが多く植えられており、秋の紅葉が見所です。

鐘楼跡と、橋の遺構


鐘楼跡。池に突き出したようになっており、広く景色を眺められ、橋の遺構もよくわかります。池にかかっていた橋の姿が想像できるかのようです。

常行堂


江戸時代に再建された常行堂。現存する建物の中でも古いものです。手前の園路には秋にハギの花が見られます。また、周辺の秋の紅葉も綺麗です。

州浜


海岸にある砂州を表現しています。優美な曲線で入江の形を作り出しています。近くで観賞することはできず、園路から少し遠目で眺められます。

出島石組と池中立石


荒磯(ありそ)を表現した石組み。飛島にある高さ2.5mの立石(たていし)が目立ちます。見る場所によって立石の角度が変化するのもポイント。象徴的な姿で、毛越寺を代表する景観となっています。

宝物殿


仏像や書籍、発掘品などを陳列した宝物殿。追加料金はないので時間があれば見学していきましょう。庭園についても解説があります。また、一階部分は雨が当たらない休憩所になっているので、最後に一息ついていくのも良いでしょう。

毛越寺周辺の見所

観自在王院跡


毛越寺の隣にあった寺院跡。こちらも発掘調査で発見された遺構をもとに復元修復された浄土庭園があり、セットで観賞するとよいでしょう。特にハギや紅葉の季節は見所が多いです。

中尊寺


平泉まで来たら、一度は中尊寺にも立ち寄ってみましょう。金色堂をはじめとした、多くの国宝や重要文化財を観賞できます。特に紅葉の時期はとても美しいです。

施設の概要

場所
岩手県西磐井郡平泉町平泉大沢58

交通手段
■公共交通機関
JR「平泉」駅から徒歩約10分。
JR「平泉」駅から循環バスで約3分。
■車
東北自動車道「平泉前沢IC」より約10分。
東北自動車道「一関IC」より約15分。
駐車場あり(有料)

入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:https://www.motsuji.or.jp/

My impression

庭園デザイン★★★★
遺構が良好な姿で残されていたことにより当時の浄土庭園の姿をほぼ復元しており、それだけでも貴重な存在です。庭園の歴史的・学術的な価値は高いといえるでしょう。出島や州浜など海の景色に見立てた池の周囲の景観、小川の流れに見立てた遣水など、すでに近世以後の日本庭園に通じる自然の美しい景色を模した意匠が見られます。
ただ、大事な要素である堂舎が失われており、こちらの復元は進んでいません。

植物充実度★★★
大きな見所は紅葉。モミジの本数が多く、寒冷地のためか非常に発色が良いのも特徴です。他にはハナショウブやハギの花も見所。植物の管理状態は良好です。

娯楽度★★★★★
紅葉の最盛期は誰にでも勧められるほど美しい景色が楽しめます。一方で、浄土庭園の雰囲気を味わいたいだけなら、どの季節に訪れても楽しめるでしょう。
平泉駅のすぐそばにあり、同時に中尊寺をはじめとした平泉の観光が楽しめます。そのため娯楽度は高い評価としています。

混雑度★★★
紅葉の最盛期は団体客も多くなり、やや混雑します。それ以外の季節は行楽シーズンでも酷く混雑することは少ないです。境内は広く、オープンスペースもあるのでゆっくりできる場所はあります。

交通の便★★★★★
公共交通機関利用の場合、駅から歩いて行けるため非常に良いです。さらに循環バスやレンタサイクルなど他の選択肢も色々あります。
車の場合、広い駐車場があり、困ることは少ないでしょう。

総合満足度★★★
奥州藤原氏の栄華を伝える広大な浄土庭園。ただ、当時の堂舎はすべて焼失し、再建された建物も少ないです。庭園の遺構は大部分が復元されていますが、堂舎もあっての庭園とみるか、それとも諸行無常の結果としての現在の姿とみるかで評価も分かれそうです。
個人的には、現在の姿も良いとは思うものの、少し物足りない部分があるのが本音です。遠方からであれば、なるべく下記の花や紅葉が楽しめる季節に訪れると良いでしょう。

遠方から訪れる場合のお勧めの季節
梅雨(ハナショウブ)
秋(ハギ)
晩秋(紅葉)

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