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庭園・ガーデン・植物園・花の名所の訪問記

庭園・ガーデン・植物園・花の名所の訪問記

毛利氏庭園・毛利博物館

山口県防府市にある毛利氏庭園・毛利博物館は、国指定名勝の庭園と、重要文化財である旧毛利家本邸の一部を博物館として公開している複合施設。名前の通り、戦国大名としても名高い旧長州藩主、毛利氏の邸宅と庭園です。
1916年(大正5年)に完成した旧毛利家本邸は、約1200坪もの広さをもつ豪邸です。ここでは、その建築意匠を鑑賞できるだけでなく、国宝を含む毛利家に伝来する貴重な文化財も楽しめます。また、邸宅の目の前には約25000坪もの広さを誇る日本庭園が広がり、四季折々の美しい景観が同時に観賞できるのも大きな魅力です。
このページでは、サイトの趣旨にそって、主に庭園部分を中心に紹介しています。

園内地図(クリックすると別ウィンドウで開きます)

毛利氏庭園の地図
大きな庭園としては珍しく、見所の場所ごとに細かく名称が付けられていません。そのため、便宜上、地図に名称を加えている個所(オレンジ文字)があることは、ご了承ください。
庭園と博物館には順路があります。このページでは、庭園から博物館の順で、各施設の順路通りに主な見どころを紹介します。

本門(表門)

本門(表門)
庭園と博物館共通の入口である立派な門。
門の手前は、マツやモミジの並木道となっているので雰囲気が良いです。

門から邸宅に続く導入路

門から邸宅に続く導入路(サツキ)
門から邸宅に続く導入路(紅葉)
本門をくぐって中に入ると、向かって左手にはサツキの刈り込みもの、右手には流れのあるモミジ林となっています。
サツキの花の見ごろは例年5月下旬~6月上旬頃、モミジ林の紅葉の見ごろは例年11月中旬~12月上旬頃となっています。モミジ林は新緑の頃も美しいです。

石橋

石橋
モミジ林の流れに架かる石橋。新緑や紅葉の時期は特に美しいです。

前庭

前庭
車寄せになっている、広い砂利敷きの前庭。
券売所があり、ここで庭園(奥庭)と博物館(本邸)に入口に分かれます。庭園と博物館それぞれの単独券、庭園と博物館の共通券があり、初めての訪問であれば共通券を選択するとよいでしょう。
なお、共通券があれば、庭園と博物館どちらからでも自由に出入りできます。

中雀門(庭園入口)

中雀門
有料エリアになっている庭園(奥庭)の入口となっている中雀門(ちゅうじゃくもん)。
入園料金を支払った後、門をくぐって奥庭に向かいましょう。

毛利氏庭園(奥庭)

大きな池を中心とした池泉回遊式庭園。比較的自由な雰囲気で植栽や石組、水の流れが配置され、北側の山々と南側の瀬戸内の借景も楽しめる、自然主義的な近代日本庭園となっています。
四季折々の魅力があり、特にサクラやサツキ、紅葉の季節は見応えがあります。

旧毛利家本邸本館

旧毛利家本邸本館
奥庭内に入って順路通りに左手に進むと、立派な旧毛利家本邸の本館が見えてきます。
本館南側は、庭園がよく見渡せるようにガラス窓が多い開放的な造りとなっています。

本館周辺の庭

本館周辺の庭(初夏)
本館周辺の庭(紅葉)
本館周辺はマツやサツキ、モミジなどの植栽と石が配置された庭になっています。
特に、美しく刈り込まれたサツキの花が咲くころは美しいです。

滝
本邸と池の間のくぼ地に、石組を用いた滝が落ちています。
水量が少なめな、落ち着いた印象の滝で、周囲の自然な雰囲気とよく合っています。

灯籠

灯籠
鉄筋コンクリート製の巨大な灯籠が目を引きます。周囲は景色が開けて見晴らしが良いです。

庭園西側の流れや池

庭園西側の流れ
庭園西側の池
庭園西側には水の流れや池があり、モミジが多く雰囲気が良いです。
特に、新緑や紅葉の季節は美しい景色が楽しめます。

ひょうたん池

ひょうたん池
庭園の南側に広がる大きな池。初夏から夏にはスイレンの花がみられます。

池越しにみた旧毛利家本邸

池越しにみた旧毛利家本邸(広角)
池越しにみた旧毛利家本邸(望遠)
池越しに本邸が眺められます。北側にある多々良山などの山々が借景となっているほか、中ほどに架かる石橋が風景のアクセントになっています。

池の南側にある桜並木

池の南側にある桜並木
ひょうたん池の南側には桜並木があり、春の開花期は美しいです。
サクラの見ごろは例年3月下旬~4月上旬頃となっています。

石橋(奥庭)

石橋(奥庭)
先ほど、南側から池越しに見た石橋。北側の池の反対側から望む景色も見所です。
よく見ると、水際の植栽や石組にも工夫がみられます。

芝生広場のサクラ

芝生広場のサクラ
奥庭の西側に広がる、大きな芝生広場。
広場周囲にはサクラが植栽されており、春の開花期にはお花見が楽しめます。

毛利氏庭園(奥庭)の紹介は以上。中雀門から前庭に戻り、博物館へ向かいましょう。

毛利博物館

博物館前半は旧毛利家本邸の建物意匠が見学できます。後半は展示室となっており、毛利氏に伝来する様々な文化財を鑑賞できます。時期によっては、国宝や重要文化財の企画展示もあるので、公式サイト等でチェックしてみるとよいでしょう。
また、二階からは庭園の景色が見下ろせるので、見逃さないようにしたいです。

表玄関

表玄関
広い車寄せと、大きく張り出した屋根が、当時の公爵家毛利氏の地位の高さを示しています。

表玄関から振り返る前庭

表玄関から振り返る前庭
表玄関に入って振り返ると、前庭にある大きな灯籠とヤマモモの樹が目を引きます。
特に、サツキの花が咲くころは美しいです。

応接室

応接室
本邸内部はほぼ和風建築ですが、ここだけは洋間となっています。
このように、博物館前半は建物内を巡りながら様々な建築デザインを見学できます。
発電設備や上水設備、水洗トイレなど当時の最先端の設備も興味深いです。

客室(大広間)

客室(大広間)
本邸内で一番格式が高い部屋。
伝統的な和風建築の意匠と、洋風趣味のシャンデリアが合わさっています。

中庭

中庭
客室の北側には広い中庭があります。
大きな灯籠や石組、南国趣味のソテツの植栽が目を引きます。

二階から眺める庭園の景色

二階から眺める庭園の景色
二階からは、奥庭側で見た本館のガラス窓から、庭園の景色を広く見下ろせます。
現在は埋め立てが進み、瀬戸内海の景色はよく見えませんが、瀬戸内海側に突き出た向島(むこうしま)や江泊山(えどまりやま)が借景となっています。
また、 遠くだけでなく、手前にある奥庭の景色も見所で、よく管理された植栽と、石組や灯籠などが折り重なった美しい景色が望めます。

※展示室内は撮影禁止となっており、紹介は省略します。

毛利ミュージアムショップ・ギャラリー舞衣

毛利ミュージアムショップ・ギャラリー舞衣
毛利博物館の隣にある、ミュージアムショップ兼ギャラリー。毛利氏関連の様々なグッズが販売されています。雰囲気を壊さない大正モダンなたたずまいが良いです。
建物内には、軽飲食や抹茶が楽しめる喫茶スペースもあり立ち寄ってみるのもよいでしょう。

周防国分寺と防府天満宮

防府市街には様々な名所があり、毛利氏庭園と併せて楽しめます。
ここでは、防府駅からの経路上にある、防府天満宮と周防国分寺について簡単に紹介します。

防府天満宮

防府天満宮
春風楼からの展望
日本で最初に創建された天満宮とされる、長い歴史のある神社。
高台にあり眺めが良いのも特徴で、春風楼という建物からは周辺の景色が広く望めます。

芳松庵(ほうしょうあん)と庭園

芳松庵と庭園
防府天満宮の南東側には、平成3年に建てられた比較的新しい芳松庵という茶室があります。茶室は椅子席もあり気軽に入れます。また、付属の庭園も美しく、立ち寄ってみるとよいでしょう。
なお、茶室内の拝観料(抹茶・お菓子付き)は有料で、庭園は無料となっています。

周防国分寺

周防国分寺
奈良時代に建立されたという歴史ある寺。写真の建物は江戸時代後期に再建された仏殿の金堂。
また、多数の文化財(仏像や文書)を保存しており、有料で拝観が可能です。

施設の概要

場所
山口県防府市多々良1丁目15−1

交通手段
■公共交通機関
JR「防府」駅から阿弥陀寺行の路線バス「毛利本邸入口」下車、徒歩5分。
JR「防府」駅から徒歩約35分。
JR「防府」駅からレンタサイクルで約15分。
※いずれも本門(表門)までの所要時間。
■車
山陽自動車道「防府東IC」から約10分。
山陽自動車道「防府西IC」から約10分。
※駐車場あり(無料)

入場料・休館日・開園時間は下記URLを参照
URL:https://mohri-museum.com/

My impression

庭園デザイン★★★★
見立てや象徴に依存しない、自然主義的な庭園デザインとなっています。植栽や石組、水の流れといった配置は、比較的自由で堅苦しくない、伸び伸びとした印象があります
本邸の建物との調和や、北側にある山々を借景として利用しているのも、好ましいです。
一方で、ひょうたん池の形状が公園のような味気ないものなのがやや残念。

植物充実度★★★
日本庭園でお馴染みのマツやツツジ、サツキといった植栽が多いです。サクラの本数も多めで、春の開花期は美しいです。一番の見所はモミジで、新緑のほか、紅葉最盛期はとても美しいです。
他にこれといった花の見ごろはありませんが、その分冬以外はいつ訪れても楽しめます。
植物の管理状態は良好です。

娯楽度★★★★
紅葉の最盛期は誰にでも勧められるほど美しい景色が楽しめます。それ以外の季節は派手な景色は望めず、ゆったり散策するのに向いています。
庭園だけでなく、博物館の展示も一緒に楽しめるのが大きな魅力です。国宝を含む文化財は展示の入れ替えがあるので、企画展などのイベントを事前にチェックしてみるとよいでしょう。
周辺観光なら、紹介している防府天満宮や周防国分寺がまず候補になるでしょう。同じ路線バスで行ける、文化財やアジサイが見所の東大寺別院阿弥陀寺。自家用車限定になりますが、ツツジの花が咲き、瀬戸内海の景色が美しい大平山山頂公園などもあります。

混雑度★★★
サクラや紅葉の最盛期の土日祝は混雑します。これらの時期にゆっくり観賞したいなら、朝早くや平日に訪問するなど工夫しましょう。それ以外の季節は混雑することは少ないです。
施設内は広く、オープンスペースも多いので、混雑時でもゆっくりできる場所はあります。

交通の便★★★
公共交通機関利用の場合、最寄り駅から距離がありますが、経路に防府天満宮などの見所があるので、夏場以外なら歩きながら巡るのも悪くないでしょう。ただ、一般的には路線バスを利用するのが良いと思います。路線バスの本数は少なめなので、事前に計画を立てておきたいです。
また、防府駅でレンタサイクルを利用するのも良いでしょう。バスの時刻表に縛られず自由に巡れるのが良いです。また、防府市街地は高低差が少なく、ほぼ平坦で走りやすいのも良い点です。
車の場合、比較的広めの駐車場があり困らないでしょう。サクラや紅葉の最盛期の土日祝は駐車場が混雑するので、朝早めに着くことをお勧めします。

総合満足度★★★★
自然主義的な自由な雰囲気の庭園で、流れや水辺に沿った植栽や石組、所々で大きく開ける展望と、その借景となる山々や瀬戸内の景色など魅力となっています。個人的に、格式ばらない自然なデザインの庭が好みなのでこの評価ですが、伝統的な庭が好みの場合は満足度が低くなるかもしれません。
遠方から訪れる場合、紅葉の時期は見所が多く、特におすすめの季節となります。また、瑞々しい景色が楽しめるツツジやサツキの咲くころも良いでしょう。サクラの季節も良いですが、庭園独特の景色を楽しみたいなら、上記の季節の方がより楽しめるでしょう。
博物館も同時に鑑賞できるのが魅力で、本邸の建物自体も庭園の良い添景となっています。

備考:博物館の壁や襖、展示品の一部、また、庭園の一部(あずまや、西側の流れ等)で、修繕が行き届いてない箇所があり気になります。
様々な事情があることは察せられますが…。文化財の保護について考えさせられます。

遠方から訪れる場合のお勧めの季節
春(サクラ)
晩春(新緑、ツツジ)
初夏(サツキ、スイレン)
晩秋(紅葉)

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